自分で判断して決めること 2
- 公開日
- 2012/06/27
- 更新日
- 2012/06/27
校長メッセージ
NHK交響楽団の第1コンサートマスター(バイオリニスト)の篠崎史紀さんは、N響の演奏会やソロ活動の合間をぬって、子どもだけで組織する東京ジュニアオーケストラを指導しています。団員は小学生から高校生まで約100人。これは、音楽を一生愛する人を育てることが目的で、けっして音大入試やプロへの架け橋ではないそうです。
篠崎さんは言います。「子どもたちが、何か壁にぶち当たって悩んでいるとき、大人が口や手を出すことはすごく簡単なんだけど、あえて放っておく。ただ、道しるべだけはそっと置いておいて、それを見つけられたかどうか、見ていないふりをしながら見守っていくんです。道しるべというのは、たとえば悩んでいるときに窓が一つ、ぱっと開くような言葉を投げかけることですね。答そのものではなくて、子どもたちが自分自身で良い方向に気づくようなね。」
対談者が、あえて悩ませることが子どもを育てることなのかと質問すると、
「悩んで、悩んで、なぜ自分で答を探すことが大切かと言うと、音楽をやるときは僕であろうと子どもであろうと、舞台に立ったら自分の責任ですべてを遂行しなければならない。誰も代わりができない世界なんです。だから、そこでやるべきことを直感し、持てる力を出し切らなければならない。そのために自分で考え、判断し、答を見つける力を養うことが大事になってくるんです。」
篠崎さんの話は、何だか学校教育のことを語っているような気がしました。
さらに興味深かったのは、個性のかたまりのような子どもたちを、1つにまとめるのは
大変ではないかという質問に対する篠崎さんの答です。
「ベートーヴェンとかチャイコフスキーとか、みんなで立ち向かうとき、そんな巨人を前にすれば一人一人の個性なんて吹き飛んでしまう。何百年、何百万回も挑戦し続けて、まだ誰も超えることのできない壁に向かっているわけだから。でも、だからこそそれを乗り越えてやろうと、みんなの心が一つになるんです。僕は何の指示をするわけではない。巨人が子どもたちを育ててくれているんです。これは音楽に限らず、どんな分野にも言えるんじゃないかな。」
みんなで立ち向かう巨人とは何か。我々教員が毎年毎年、挑戦し続けていることとは何か。そう考えると、自分の進むべき方向が見えてくるように思えました。